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初音の鼓

概要

古典落語の演目の一つ。

初音の鼓とは、源義経が自らの愛妾である静御前に与えたとされる鼓。
ただし大元は軍記物語『義経記』に登場する架空のアイテムである。
ピクシブ百科事典より抜粋)

この鼓を元ネタに創作されたものが、古典落語の「初音の鼓」という演目である。


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初音の鼓


昔々、骨董趣味を持つ殿様がいらっしゃいました。
殿様は珍しい品を集めることを何よりの楽しみとしており、日々その収集に心を躍らせていました。

ある日、道具屋の吉兵衛が殿様のもとを訪れました。


「お久しゅうございます、殿様。
 今日は珍しい品をお持ちいたしました」

「ほう、吉兵衛か。
 久しいのう。
 さて、どのような品を持ってきたのじゃ?」

「こちらでございます。
 『初音の鼓』と申します」


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吉兵衛が取り出したのは、一見すると普通の鼓でした。
しかし、吉兵衛はその鼓についてこう説明しました。


「これは、かの源義経公が静御前に与えたとされる鼓でございます。
 この鼓には、源九郎狐の親である雄狐と雌狐の皮が張られており、非常に由緒ある品でございます」

「ほう、それが本物ならば大変貴重な品ではないか。
 しかし、証拠はあるのか?」


「残念ながら折り紙(証明書)はございません。
 しかし、この鼓には特別な力がございます。
 一打ちすると、傍にいる者に狐の霊が乗り移り、『コンッ!』と鳴くのでございます」


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殿様は興味津々でその話を聞き、試してみることにしました。


「では、余が調べてみよう」


「どうぞ、お試しくださいませ」


殿様が鼓を「ポン」と打つと、傍らにいた家臣の三太夫が「コンッ!」と鳴きました。


「これこれ、三太夫。
 そちはただ今『コン』と申したが、いかがいたした?」

「はっ、前後を忘却いたしまして、一向に覚えがございません」


殿様は面白がり、何度も鼓を打ちました。
そのたびに三太夫は「コンッ!コンッ!」と鳴き、殿様は大いに笑いました。


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実はこの鼓は真っ赤な偽物。
吉兵衛は事前に三太夫に一芝居打って欲しいと頼み込んでおりました。

「ポン」と鼓を鳴らしたときに、狐の霊が乗り移ったように振る舞って
「コン」と鳴けば一両を分け前にくれるという話でした。

三太夫もいい加減、殿様の物好きに呆れていたのもあって、
悪い趣味を諌めるいい機会だろうと快諾することにしたのでした。


「これは確かに珍しい品じゃ。
 吉兵衛、これは売り物か?」

「はい、百両でお譲りいたします」

「百両とな。
 まあよい、買い取ろう。
 しかし、その前に、今度はそちが鼓を打ってみよ。
 余に狐の霊が乗り移るかもしれん」


吉兵衛は困り果てました。

なにせ鼓は真っ赤な偽物。
自分が鼓を打っても狐が乗り移るはずがないと思っていたからです。

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しかし、殿様の命令には逆らえません。


「では、失礼して……」


吉兵衛が恐る恐る鼓を打つと、なんと殿様が「コンッ!」と鳴きました。


「殿様、ただ今お鳴きになられました!」


「何を申すか。
 余は前後を忘却しておるゆえ、覚えがない」


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吉兵衛は驚きました。
自分が偽物だと思っていた鼓が、実は本物だったのです。


「これは本物に相違ございません。
 ありがとうございます、百両でお買い上げいただきます」


「うむ、金子(きんす)をとらすぞ」


殿様から包みを受け取った吉兵衛は、ほくほく顔で中身を確認しました。
しかし、そこに入っていたのはたったの一両でした。


「殿様、これはいかがなことでございましょう?
 お代は百両のはずでは……」


殿様はニヤリとしながら言いました。

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「それでよいのじゃ。
 余と三太夫の鳴き賃が差し引いてある」


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