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井戸の茶碗

概要

古典落語の演目の一つ。

「人情噺」「武家噺」に分類されるが、「滑稽噺」として演じられる場合もある。
講談「細川茶碗屋敷の由来」を基にしたものといわれている。

題である井戸の茶碗(井戸茶碗)とは、当時珍重された高麗茶碗の一種。
Wikipediaより抜粋)

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井戸の茶碗


江戸の町に住む屑屋(くずや)の清兵衛(せいべえ)は、町中で「正直清兵衛」と呼ばれるほどの正直者でした。
彼は毎日、「屑ぃ、お払い!」と声を張り上げながら、古物を買い取る仕事をしていました。

ある日、麻布茗荷谷の町を清兵衛が裏長屋を歩いていると、身なりは粗末ながらも、どこか上品な雰囲気を持つ美しい娘に呼び止められました。


「ねえ、屑屋さん。
 ちょっとお願いがあるのですが……。」


清兵衛はその娘の美しさに心を奪われつつ、少し照れながらも「はい、何でしょうか?」と答えました。


「実は、父が持っている仏像を引き取ってもらいたいのです。
 お金がなくて、どうしても手放さなければならないのです。」


その娘は、千代田卜斎(ぼくさい)の娘でした。
彼女の父、卜斎はかつては武士として名を馳せていましたが、今は貧しい生活を強いられていました。
清兵衛はその話を聞き、心が痛みました。


「わかりました。お父さんの仏像、引き取りますよ。
 ただ、目利きには自信がないので、安く買っても申し訳ないと思いますが……」



そう言いながら、娘に案内されて部屋に入ると、卜斎が古い仏像を差し出してきました。
清兵衛は仏像をじっと見つめたが、目利きに自信がないため、値段をつけるのをためらいました。


「こんなもの、私には価値がわかりません。
 安く買ってしまっては申し訳ない。」


その正直さに感心した卜斎は、清兵衛にこう提案しました。


「では、200文で買い取ってくれ。
 それ以上の値で売れたら、儲けを折半しよう。」


清兵衛はその言葉に納得し、仏像を籠に入れて持ち帰ることにしました。

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清兵衛が仏像を持って町を歩いていると、細川家の屋敷の前で若い武士・高木佐久左衛門(たかぎさくざえもん)に呼び止められました。
高木は仏像に興味を示し、清兵衛からその経緯を聞いた上で、300文で仏像を買い取りました。

ところが、高木が仏像を磨いていると台座の底から紙が破れ、中から50両もの小判が出てきました。
中間(ちゅうげん)の良造は大喜びしたが、高木は真面目な性格でこう言いました。


「私は仏像を買ったのであって、この50両を買ったわけではない。
 これは元の持ち主に返すべきだ。」


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翌日から、高木と良造は仏像を売った屑屋を探すため、長屋下を通る屑屋たちに声をかけて顔を改めるようになりました。

その噂を聞いた清兵衛は、仏像の首が折れて縁起が悪いから、売った屑屋の首を打とうとしているのではないかと仲間に言われ、細川屋敷を避けるようになりました。

しかし、ある日うっかり掛け声を出してしまい、高木に見つかってしまいました。
怯えながらも屋敷に招かれた清兵衛は、50両のことを聞かされ、卜斎に返すよう頼まれました。
清兵衛はその誠実さに感動し、50両を持って卜斎の家を訪れました。

しかし、卜斎はこう言いました。


「気づかなかったのは私の不徳のいたすところ。
 この金は既に私のものではない。」


清兵衛は困り果て、再び高木の元へ戻ったが、高木も受け取ることを拒否しました。
清兵衛は何度も行ったり来たりし、ついには長屋の大家が仲裁に入ることになりました。


「では、千代田殿と高木殿にそれぞれ20両、苦労した清兵衛に10両を分けるのはどうか。」


高木は承諾したが、卜斎はこれも拒否した。そこで大家はこう提案しました。


「では、20両の代わりに何か形見の品を高木殿に渡し、商いという形にしてはどうか。」


卜斎は父の形見である古い茶碗を差し出し、ようやく話がまとまりました。

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この話が細川家の殿様の耳に入り、殿様は茶碗を見たいと言い、髙木を呼びつけました。
すると、ちょうどその時、居合わせていた目利きの者が茶碗を見て驚きの声を上げました。


「これは『井戸の茶碗』という世に二つとない名器です!」


細川侯は300両で茶碗を買い上げたが、高木はその金を卜斎に返すべきだと考え、再び清兵衛を呼びつけました。
しかし、卜斎はまたもや受け取りません。
そこで清兵衛はこう提案しました。


「千代田殿の娘を高木殿に嫁がせ、その支度金とするのはどうでしょう。」


高木はこの提案を快く受け入れ、卜斎もようやく納得しました。


清兵衛は最後にこう言いました。


「娘さんは、いまは裏長屋でくすんでいますが、磨けばきっと美しくなりますよ。」


すると高木は笑いながら答えました。




「いや、磨くのはやめておこう。
 また小判が出るといけないからな。」



井戸の茶わん [ 川端 誠 ]






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